句・歌

スーパーへ向かう道すがら

蝉が死に かなぶんが死に 蜂が死ぬ、8月末

自宅てに大雨警報の外を見ながら

アイスコーヒー飲みながら雷落ちるのを待っている 外に飛び出したくなるくらいの大雨やけくそみたいに

マンションの廊下にて

かにみそみたいな色した腹を見せて死んでる 蝉

集合住宅自転車置場にて

お腹を見せるのは死ぬ時だけ 蝉

自宅にて

日盛りに気の滅入りたる話聞く えびせんべいぱりりと噛みて雲の峰 うつむいて裸足の爪も赤く染め 目覚めては時が止まったような西日

自宅にて

友情を口実に飲む麦酒かな 並びたる西瓜の種や愛おしき 西日差す向かいのビルに夫(つま)の 影 炎昼に背の曲がりたる老婆ゆく 心太酢にむせながら街が好き 打水の乾きて後に帰りたる 明日のこと明後日のこと髪洗ふ

掃除機長屋*1

えー、しばらくの間、お付き合い願いたいのでございます。 掃除をする時に使うのに、掃除機っちゅうもんがおますな。 あの、ホースがついてて ぐぅいーーーーんちゅうて、ものすごい音立てて吸い込むやつでございます。 わたくしなんぞ、頭の方が、アレで ご…

近所の公園にて

葉桜や仰ぎ見てゐる今日少し

自宅にて

朝にみた夢占ひてうららなり

自宅にて眠る前に

ぼったりと重き布団をかけて寝る

自宅にて

米が無いくもってゐる 右膝が痛いと足を伸ばして座る吊り上げくらいたくなし

自宅マンション廊下にて

隣家引越し今は無人

スーパーへの道

キャベツが重い チュチュを着た娘が横切ってゆく

自宅にて

米が無い雨が降ってゐる 窓から見てゐる青い傘赤い傘並ぶ自転車が通る そこまでの自分

自宅にて

秋暮るるテレビ残虐無惨かな 秋の末疲れが抜けてゆくを待つ 秋日和眠りの精や立ち去らず 日常に背筋凍りて秋の声 秋時雨思い出さずに部屋にゐる 濁り酒飲みて忘れたふりをする

夫の故郷にて

足長き蜘蛛を見ている秋更くる 星月夜道なりにゆく我を呼び 栗拾う子らの夢みて彷徨えり 手渡され柿持つ手さえぎこちなく 南天の実を指差せり君とゐて

公園にてベンチで日にあたりながら

サンドリヨンの目玉焼き、ひとつ、ふたつ 食べたら底ついた底ついた 大どろぼうの落としもの、みっつ、よっつ くさくてやり切れぬやり切れぬ まぐろ漁師のサンバイザー、いつつ、むっつ ちぎれて巻き戻し巻き戻し マイティーマウスの指ぬき、ななつ、やっつ …

自宅にて髪を乾かしたる時

スーパー婆さん葬儀屋小町 俺が歩けばアキレス切れる ラララ宇宙は籔の中 ラララ宇宙は籔の中 スーパー婆さんいろはにほへと 俺もお前も死んだら終わり ラララそこらの犬の糞 ラララそこらの犬の糞 スーパー婆さん桃栗八年 俺はひとりでロボット走行 ラララ…

自宅にて

秋晴に顔を洗って上げており

神戸にて

大切にされてなお身のうそ寒し 足どりも早く早くと秋の暮れ 君の言う東と西で昼の月 元町の空高く見ゆ汽笛の音 手放してみて初めての薄紅葉 耳ふせた猫がそろりと秋日和

公園にて

すれ違うとんぼだけしか見ていない

自宅にて

プルトップ開ける間も惜し秋の暮れ ひとりゐて泣きそで泣かぬ夜長かな まっすぐに歩けば着くか夜長し 送別の帰る足元そぞろ寒 週末の予定も決めず肌寒し 去年より酒量が増えて秋更くる 台風のごとく心は離れけり 色変へぬ松の帯など締めて会ふ

自宅にて

秋の風猪口を持つ手のさびしさや 夕暮れに鏡の女歳をとり 魂の抜けてごろりと秋の夜 秋刀魚焼く大根おろす飯を喰う 栗の実の黄色に許す気持ち湧く 秋の宵子の生まれたる知らせ聞く

近所の公園にて

秋桜の迷路探している頭 じゃんけんで決められないの暮れ早し 追いかけて気配ただようキンモクセイ 秋の空行方知れずになりたくなる

最寄り駅にて

地下鉄のホーム下から秋の虫

図書館への道

どんどんとつつじ次々咲き誇り 花水木君の返事を待ってゐる

自宅にて

朝起きて血の匂いする春疾風

新大阪駅にて

遠くなる背中見ている花曇り

近所の花屋にて

桃の花匂いなんだかいじらしい

近所の公園を散歩しつつ

すすき野にゲゲゲゲゲゲと唄う子ら 踏みつけてやりたき鳩の秋太り どんぐりを見つけてうれし四十路前