句・歌

南港にて

空色の自転車に乗る君の背におさなき頃を思い出しては

自宅近くの公園にて

こでまりと君の名前をおぼえけり

自宅ベランダにて

一晩で満開となる花つつじ 劇的に移ろう時や仲の春

帰宅途中にて

春の雨甘く途方にくれている

自宅にて

神様はおらず花冷え昨日今日 牛乳をあたためており猫の恋 頬ずえにため息ひとつ春の昼

通勤途中、駅までの道にて

知らせたるほどのこと無き柳の芽

万博公園にて

ヒガンザクラ posted by (C)魚政 川べりのラッパズイセン整列す さえずりて小鳥のごとく桜待つ 桃の香に降り出しそうな曇り空 はじまりは終わりのはじまり春の花 花びらを散らすどこかからの風 見つけたらヒガンザクラより愛す ただ一輪そっと咲き初めしだれ…

両親の家からの帰り道

朧月君がこの地にいるという

大阪なんば宗右衛門町にて

東風吹きて浪速言葉の二人連れ 春来る角力が二人宗右衛門町

自宅にて

いもけんぴ食べても食べても余寒かな 春塵や雑巾持つ手くたびれる 草餅の香りうれしい息を吸う 桜餅君の視線を追ってゐる 春眠や寝過ごしあわてている夫 いかなごのお福分け来る夢をみた

自宅布団の中にて

後悔もおんなですもの春浅し あさましく春の眠りや楽しけれ 春眠や膝で丸まる猫のよな 電話にも出ずに平和な春の夢

自宅(洗面所・台所・食卓)にて

水滴のついた顔上げ春浅し 春浅き紅茶茶碗を洗いをり 羊羹をつるり飲み込み春浅し ふた親の声も小さく冴え返る お湯割りの焼酎二杯寒戻る すっぴんで道に迷ったような春 杉山を焼く夢をみるやまいだれ 柿ピーの割合思う余寒かな

寝床にて(四時に目覚めて眠れなくなった)

ゆで卵腹減っている冬の朝 朝の音目が覚めている寝床 窓の外猫はいのちがけで鳴いている 朝が来てまた生き返る雀も人も

図書館からの帰り道にて

はらはらり雪をあつめたような犬

自宅ベランダにて

初春の風に吹かれて酒をぬき

自宅にて

芋けんぴいざこざ見聞きする日かな こじれたる本人よりも親兄弟 まんじゅうが怖くなるほど旅土産

自宅付近にて買い物帰り

秋袷伊達や粋狂で生きている どんぐりが落ちて何にも無い暮らし

自宅ベランダにて

ベランダにかなぶん死にて秋の声

地下鉄の駅にて

線路わき隠れ鳴くなり秋の虫

買い物帰り近所の道にて

寝不足のあたまの上に飛ぶとんぼ

自宅ベランダにて・中秋

猫が来て通り抜けゆく月見かな 星なくて月に願いをピノッキオ 仲秋やもたれし柵の冷ややかさ 家にいてひとりの月見旅を恋う

自宅寝床にて

秋の蚊や生命がけでも許さない うとうととしては目覚めて秋の夜 こつこつが大切としる葉月かな

自宅、ベランダにて

入道と鰯同居の空にみる あれやこれ思ってみても暮れ早し クレーンのぬっと立ちたる空高し

自宅、寝床、夜

眠れずに聞くあじけなく虫の音 条件が全てそろっても眠れない

自宅にて、昼食中

汗だくでただひたすらに飯を喰む

酒場にて

会うたびに同じ話を繰り返し悩んでないと言いながらなほ その話デジャブですかとだだちゃ豆 厭きるほど聞いた話や空グラス 盲目の恋に浸って夏終わる

以前、友人と会った時に

春の日に昔の話ばかりなり

交差点にて

雨上がり後ろ姿を見ていたかった 行き過ぎる君を目で追い春うらら

自宅眠れず、夜

一瞬のまぶたの裏に満天の星、星、星で見失いたい

自宅ベランダにて洗濯物を干しながら

晴れわたり五月場所なり初日なり