句・歌
空色の自転車に乗る君の背におさなき頃を思い出しては
こでまりと君の名前をおぼえけり
一晩で満開となる花つつじ 劇的に移ろう時や仲の春
春の雨甘く途方にくれている
神様はおらず花冷え昨日今日 牛乳をあたためており猫の恋 頬ずえにため息ひとつ春の昼
知らせたるほどのこと無き柳の芽
ヒガンザクラ posted by (C)魚政 川べりのラッパズイセン整列す さえずりて小鳥のごとく桜待つ 桃の香に降り出しそうな曇り空 はじまりは終わりのはじまり春の花 花びらを散らすどこかからの風 見つけたらヒガンザクラより愛す ただ一輪そっと咲き初めしだれ…
朧月君がこの地にいるという
東風吹きて浪速言葉の二人連れ 春来る角力が二人宗右衛門町
いもけんぴ食べても食べても余寒かな 春塵や雑巾持つ手くたびれる 草餅の香りうれしい息を吸う 桜餅君の視線を追ってゐる 春眠や寝過ごしあわてている夫 いかなごのお福分け来る夢をみた
後悔もおんなですもの春浅し あさましく春の眠りや楽しけれ 春眠や膝で丸まる猫のよな 電話にも出ずに平和な春の夢
水滴のついた顔上げ春浅し 春浅き紅茶茶碗を洗いをり 羊羹をつるり飲み込み春浅し ふた親の声も小さく冴え返る お湯割りの焼酎二杯寒戻る すっぴんで道に迷ったような春 杉山を焼く夢をみるやまいだれ 柿ピーの割合思う余寒かな
ゆで卵腹減っている冬の朝 朝の音目が覚めている寝床 窓の外猫はいのちがけで鳴いている 朝が来てまた生き返る雀も人も
はらはらり雪をあつめたような犬
初春の風に吹かれて酒をぬき
芋けんぴいざこざ見聞きする日かな こじれたる本人よりも親兄弟 まんじゅうが怖くなるほど旅土産
秋袷伊達や粋狂で生きている どんぐりが落ちて何にも無い暮らし
ベランダにかなぶん死にて秋の声
線路わき隠れ鳴くなり秋の虫
寝不足のあたまの上に飛ぶとんぼ
猫が来て通り抜けゆく月見かな 星なくて月に願いをピノッキオ 仲秋やもたれし柵の冷ややかさ 家にいてひとりの月見旅を恋う
秋の蚊や生命がけでも許さない うとうととしては目覚めて秋の夜 こつこつが大切としる葉月かな
入道と鰯同居の空にみる あれやこれ思ってみても暮れ早し クレーンのぬっと立ちたる空高し
眠れずに聞くあじけなく虫の音 条件が全てそろっても眠れない
汗だくでただひたすらに飯を喰む
会うたびに同じ話を繰り返し悩んでないと言いながらなほ その話デジャブですかとだだちゃ豆 厭きるほど聞いた話や空グラス 盲目の恋に浸って夏終わる
春の日に昔の話ばかりなり
雨上がり後ろ姿を見ていたかった 行き過ぎる君を目で追い春うらら
一瞬のまぶたの裏に満天の星、星、星で見失いたい
晴れわたり五月場所なり初日なり