茗荷谷の猫

茗荷谷の猫

茗荷谷の猫

江戸時代、明治、大正、昭和、それぞれの時代で、様々な登場人物が 繰り広げる、ほろ苦く、胸がしめつけられるような短編集。
とってつけたような感じがなく、ものすごく、淡くかかわる形での連作になっている。
「偏奇館」という古本屋が出て来たり、内田百けん先生が登場したりといったところも、本好きには 楽しいしかけ。
大家に頼まれて、百けん先生のところへ借金の取り立てに行く“仲之町の大入道”や 人と関わらず生きていこうとしている男が周囲の人間に どんどん誤解(いい方に)されていく“隠れる”、母と娘を描いた“てのひら”が好きな話だった。
“てのひら”など、年老いた母を思いながら、なぜか、母に優しく出来ずに傷つけてしまう娘との関係が、何とも身につまされるような感じで、胸苦しくなってしまった。
母に、もっと優しくせねば。