きものがたり

きものがたり (文春文庫)

きものがたり (文春文庫)

幼い頃から着物になじんできた著者が箪笥の中身を大公開。苦労多かった母親が残した泥大島、直木賞授賞式に着た山茶花の訪問着など着物にまつわる思い出と歴史を綴ったエッセイは、著者が歩んできた人生をも物語っている。一月から順に並べられた着物のカラー写真は着物歳時記。和装の参考書にも適している。


戦前戦後を経験された着物好きの方の文章を読んでいると共通しているのが、戦争中や戦後の貧しい時期に着物を失ってしまった話が出て来ることが多い。
愛着のある着物を自分ではどうしようもない事情で失ってしまった悔しさ虚しさを思っていると、祖母(父方の)のことを思い出した。
祖母は田舎の人が大嫌いなのだと言っていた。
理由は言わなかったが、田舎の人は意地が悪いと。
最近、読んだ戦中戦後を生きた女の人たちの本を読んでいて、思い当たる。
比較的裕福な家庭の お嬢さんだった祖母は着物もたくさん持っていただろう。
愛着のあった着物を食べ物と引き換えたことだろう。
何十年経っても その時の悔しさや悲しさが消えなかったのだろう。
もちろん、着物と作物を交換した田舎の人たちも思うところがあったのだろうけど。


閑話休題
宮尾登美子さんの豪華ではなやかな着物がたくさん見られてうっとりとしてしまう。
文庫本で買ってしまったので、写真が小さいのが少し残念なのだが。
着物、着るものなのだけど、それだけでは無く、人の気持ちのこもったものだと、しみじみとしてしまう。