渡りの足跡
- 作者: 梨木香歩
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/04/01
- メディア: 単行本
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幼いころに星空を見た経験をもたない鳥は、成長してからいくら星空を見せても定位することができない__つまり、自分の内部に、外部の星空と照応し合う星々を持っていない、ということなのだろう(ということは、他の鳥はそれを持っているのだ!)サケが生まれ故郷の川の水を記憶していて、いつかそこへ帰っていくこととも似ている。
自分を案内するものが、実は自分の内部にあるもの、と考えると、「外界への旅」だとばかり思っていたことが、実は「内界への旅」の、鏡像だったのかもしれない、とも思える。
(梨木香歩『渡りの足跡』新潮社 P.158)