渡りの足跡

渡りの足跡

渡りの足跡

渡り鳥たちを見て追いかけて、出会ったことから、梨木さんが思ったこと考えたことなどのエッセイ集。

幼いころに星空を見た経験をもたない鳥は、成長してからいくら星空を見せても定位することができない__つまり、自分の内部に、外部の星空と照応し合う星々を持っていない、ということなのだろう(ということは、他の鳥はそれを持っているのだ!)サケが生まれ故郷の川の水を記憶していて、いつかそこへ帰っていくこととも似ている。
自分を案内するものが、実は自分の内部にあるもの、と考えると、「外界への旅」だとばかり思っていたことが、実は「内界への旅」の、鏡像だったのかもしれない、とも思える。


梨木香歩『渡りの足跡』新潮社 P.158)