トゥルー・ストーリーズ

トゥルー・ストーリーズ (新潮文庫)

トゥルー・ストーリーズ (新潮文庫)






Lが三階の部屋の窓を開けて、私に金を投げてよこしたことである。(中略)記憶に残っているのは、開いた窓と、十セント貨が空中を飛ぶ光景だけだ。(中略)
ところが十セント貨は木の枝に当って、私の手へと向かう放物線は途切れてしまった。硬貨は木からはね返り、どこか付近に音もなく着地して、見えなくなってしまった。かがみ込んで舗道一帯を探し、木の根元の落葉や小枝をひっくり返してみたことを私は覚えている。だが硬貨は見つからなかった。
(中略)
煙草に火をつけようと、ちょっとした凹みのような場所に入り込むと(その日は風が強かった)、何とそこに、足下から五センチと離れていないところに、十セント貨が一枚落ちていた。私はかがみ込んで、それを拾い上げ、ポケットにしまった。馬鹿げた話に聞こえるかもしれないが、それがその朝ブルックリンでなくした十セント貨にちがいないと私は信じて疑わなかった。




これを読んで、「ほら!やっぱり!やっぱり、こういうことってあるんだ!」と快哉を叫びたい気持ちになった。
私も、落ちた硬貨が、別の場所にあらわれるという体験をしたことがあるのだ。↓


隠居魂 2008年12月2日 http://d.hatena.ne.jp/uomasa/20081202