一本の茎の上に

一本の茎の上に

一本の茎の上に

茨木のり子さんの詩集『自分の感受性くらい』に衝撃を受け、エッセイ集も購入。
こうやってどんどん読みたい本が増えていく。
困ったようなうれしいような。
世界が広がっていくようなよろこびはあるのだけれど。
このエッセイ集で紹介されていた吉野弘さんの『祝婚歌』も すばらしかった。


二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと
気付いているほうがいい


完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい


二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい


互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい


正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい


立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったりゆたかに
光をあびているほうがいい


健康で風にふかれながら
生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして、なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい